世界の旅(4)~チベット

仕事がら世界のいろんなところに足を運びました。その中で一番印象に残ったところはどこだ、と聞かれれば迷いなく「チベット」とお答えします。

私が最初にチベットを意識したのが、最初の中国駐在時の19891月の時でした。連日新聞で大きく報道されていたパンチェン・ラマ10世の逝去と後継者をどうするかというニュースがきっかけでした。当時の私はチベットのこともチベット仏教のことも余り知らず、どうして一人のラマ僧の死と後継者探しがこれほど大きく取り上げられるのか理解できませんでした。身近にいた自分の中国語の先生が説明してくれた内容はとても神秘に満ちた話でした。活仏という言葉を聞いたことあるでしょうか。パンチェン・ラマは阿弥陀仏の化身で転生(リインカネーション)するという話です。パンチェン・ラマが亡くなった時の右手の人差し指の方向に転生した子供を探しにいくそうです。その際には生前パンチェン・ラマが身に着けていた着物や持ち物を持って、候補となった子供たちに選ばせてみるとのこと。何度も何度もこのような確認作業を経て最終的に活仏(転生者)として認定されるわけです。私はそれからチベット仏教にかかる本やチベットについての情報をむさぼるように集めました。その後、2度目の中国駐在となる1997年7月に念願を果たしてチベットの地を踏むことができました。

歴代のパンチェン・ラマが眠るシガッェのタルシンポ寺にも行きました。ポタラ宮はすっかり観光地となって宗教色はかなりうすれていましたが、タルシンポ寺は現役のお寺としてしっとりと息づいていました。パンチェン・ラマ10世の眠る部屋に入った時、隣の信者の五体投地の真似をして頭を床につけてみました。甘いバターの匂いがしました。この世のモノとは思えないほど美しく厳しい自然、そして想像をはるかに超える敬虔なチベット仏教徒・・。それまでも、その後も経験したことがない特別な時間でした。

写真の左端は南木林県の民家を訪ねた時のもの。真ん中は高度5000メートルの峠で撮ったもの。右端がタルシンポ寺の若い僧たち。

 

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