インドの犬

木彫りを(突然)始めたのが2014年の秋。当時は魚ばかり彫っていました。徐々に哺乳類を彫り始めたのが1年後くらい。そして2016年の2月に一つの転機が訪れました。

2015年4月から昨年の3月まで大学に出向していました。毎年夏にはフィリピン、冬にインドに学生を連れて都市の貧困、農村部の現実をひたすら経験させるということをしていました。さんざん途上国に行っていた私ですが、インドは初めて。2016年の2月についにインドに足を踏み入れました。

場所はカルナタカ州のバンガロール。南インドですが標高1000mあるので、日中は暑いですが、夜は涼しくなり意外と過ごしやすかったです。一番驚いたのが、人間の多さ(間もなくインドは中国を抜いて世界一人口の多い国になります)ではなく、どこにでもいる牛と犬の多さでした。

街の中も田舎でも犬がでいっぱいです。インド人が犬好きかというと一概にそういえない気もします。何故かというと、ほとんどの犬が野良犬だからです(ごく稀に首輪をしている犬もいますがリードをつけていないので、飼われているのかは不明)。といって犬嫌いかといえばそうではありません。撫でたり可愛がる様を一度も見ていないかわりに、蹴ったり邪慳にしたりする様もみていないからです。何というか共存しているって言葉が一番合うかなと。

インドは暑いので日中は例外なく皆日陰で寝ています。とても気持ちよさそうです。誰かが餌をあげていることも見たことないので、夜中になるとゴミでも漁っているのでしょうか。インド人が犬を虐待していないせいか、私に唸ったりすることはありません。写真を撮るために近寄ってもじっとしているか、面倒くさそうにその場を去るかのどちらかです。

日本にいる犬のほとんどは野良犬ではありません。誰かに飼われて餌をもらい、外出時はリードで繋がれます。インドの犬はそういう意味では自立しているといえるでしょう。行きたいところに行ける自由がある代わりに、常に腹を空かしています。つまり飢餓というリスクを背負いながらの自由。自由であるからか、その姿は凛としています。私はインドの犬が大好きになりました。インドは狂犬病で年間2万人が死んでいる狂犬病蔓延国(世界一)なので、体を撫でることはしません(日本で狂犬病の予防接種を3回打っていきました。これが1ショット12000円とバカ高い)。ただ近くに居て寝顔を見たり、写真を撮ったり。

撮った写真を見ながら初めて彫ったのが写真の犬。全然上手くいかなくて、犬の色の塗り方も分からなくて、試行錯誤を繰り返して何度もやり直しました。その後インドの犬を10匹くらい彫りました。この頃から木彫りの腕が上達していった気がします。今写真の犬を見ると技術的には足りないところがたくさんありますが、『思い』が強く残っていて手放すことが出来ません。

 

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